緊急分析:日本ハイテク企業の東日本大震災の影響度⑥

筆者が日本のメディア(半導体産業分野)の中で最も信頼しているブルームバーグ社の中島記者の『東日本大震災』の電機メーカー被災状況を非常に良くまとめた最新(情報更新)レポート第三弾である。

※重要記事:電機各社:東北・関東地域の工場再開状況一覧-NECは今期無配(1)
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920009&sid=aMWKsg8DNu6I

【記者:中島三佳子】
3月24日(ブルームバーグ):東日本大震災によって東北、北関東などの地域での生産拠点の再開見通しが依然立たない企業が多い。
その中でNECは24日、今期(2010年度)の配当を見送ると発表した。震災が日々の生産活動と業績予想にも影を落とし始めた状況がより鮮明になってきた。
ブルームバーグ・ニュースが、各社の公表と取材に基づき集計した地震、停電、物流停滞の影響による工場の操業状況などは以下の通り。
社名の右横に、生産停止中の拠点数を記した。

<キヤノン>5拠点
操業を停止していた工場のうち、複写機などを生産する工場(茨城県取手市)と、露光装置を製造する工場(茨城県稲敷郡)の2工場が24日までに操業を再開した。
宮崎、大分、長崎の3県で生産する各種デジタルカメラ工場や栃木と茨城の2県で生産するレンズや関連部材の工場も今週中は、操業を止める予定。

<パナソニック>非開示
22日以降、液晶テレビの組立工場(栃木県宇都宮市)とデジタルカメラ用のレンズやSDメモリーカードなどを生産する工場(山形県天童市)が、一部操業を再開した。パナソニック電工の電子材料の工場(福島県郡山市)は23日から操業を再開している。

<ルネサスエレクトロニクス>3拠点
半導体工場国内22拠点のうち一時、8拠点が操業を停止したが順次、操業再開の準備に着手または一部で操業を再開した。
24日時点で完全に生産を停止しているのは、前工程の那珂工場(茨城県ひたちなか市)で、ほかに高崎工場(群馬県高崎市)と甲府工場(山梨県甲斐市)は、再開へ向け準備を進めている。
生産を一部再開した前工程の工場は、津軽工場(青森県五所川原市)と鶴岡工場(山形県鶴岡市)。検査・組み立ての後工程3工場のうち、2工場(青森県北津軽郡、山形県米沢市)は19日から生産を再開した。
残る東京工場(東京都青梅市)も通電の範囲内で生産中で、4月1日からは全面復旧を目指すと24日発表した。

※アーキテクトGD社分析⇒旧日立系工場(東日本)は大きな影響を受け、旧三菱系工場(西日本)、分散型旧NECエレ系工場は復旧稼働開始。
ひたちなかは、自動車制御用マイコンの主力工場で、この工場ダメージは自動車業界に深刻な影響を与え、特に日産系列は他社よりも影響度は大きいと見ている。
自動車用は、FABの製造+ASSY&TEST(試験)のTESTが通常の民生品とは異なる仕様で環境テストをする必要がある。
本来、日本は地震列島であり、ハイテク産業の工場は、東西に拠点分散をしていたが、”企業統合とリストラ"で工場を東日本に集約した為、世界のサプライチェーンに影響する自体となり、計画提言は1年以上続き、全面回復までには2~3年の掛ると判断しているため、東日本ハイテク産業と自動車産業は、西日本や海外シフトをしなければ持続的成長は得られない。

<東京エレクトロン>2拠点
2拠点で変わらない。ただ、半導体製造の生産ラインに使われるプラズマエッチング装置などの工場(宮城県宮城郡松島町)は23日に電力などが復旧し、操業再開に向け準備を始めた。
熱処理製膜装置の工場(岩手県奥州市)も電力などが回復したため、2週間程度での操業再開
を見込んでいる。
一部製品を代替生産するため、山梨工場(山梨県韮崎市)の体制を整備中。

<パイオニア>なし
カーエレクトロニクスの生産工場(青森県十和田市と山形県米沢市)、有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)などの生産子会社「東北パイオニア」の工場(山形県天童市)は、17日から復旧した。

<セイコーエプソン>3拠点
福島原発事故の避難エリア内にある業務用通信基地局向け水晶デバイスの工場(福島県相馬市)と人工水晶を作る青森工場(青森県八戸市)は、代替生産を検討中。
一時停止した山形工場(山形県酒田市)と秋田工場(秋田県湯沢市)のうち、秋田ではプリンター部品、水晶デバイス、金型冶金工具などの生産を22日から順次、再開した。
碓井稔社長は地震発生直後に「総合対策本部」を設置。従業員の安否確認や被災した4工場など東北の各拠点との連絡などで陣頭指揮を執り、対策本部で代替生産など今後の対策を協議している。

<富士通>3拠点
半導体の生産3工場が操業停止中。半導体回路をシリコンウエハー上に焼き付ける前工程の3工場(岩手県岩手市1工場と福島県会津若松市の2工場)が止まっているが、操業再開の準備に入っている。半導体製品の検査・組み立てを行う後工程の工場(宮城県柴田郡)は23日から一部操業を再開した。

デスクトップパソコン、サーバー、プリンターの生産工場(福島県伊達市)は22-23日にかけて順次、製造・出荷を再開しつつ、デスクトップPCは島根県の工場で製造を開始した。電源装置や同設備、試験設備の工場(福島県石川郡)は22日から製造・出荷を再開。
携帯電話などの工場(栃木県大田原市)は操業継続、光伝送装置や関連部品の工場(栃木円小山市)は操業している。

<NEC>なし
地震に伴う損失の発生のため、配当を見送ると24日発表した。リーマン・ショックの影響で大幅赤字に陥った08年度以来の無配。
地震で操業停止していた5工場が23日から生産を順次再開し始めた。
通信機器の生産2工場(福島市、岩手県一関市)、電子部品を生産する宮城県の2工場(仙台市と白石市)、POS(販売時点情報管理)システムなど業務用端末や一部通信機器の工場(宮城県白石市)が、電力や水道の復旧を受けて生産を再開した。全従業員は無事。

<東芝>2拠点
従来は未定だった今期の配当を1株当たり年5円(09年度は無配)に復配すると24日発表した。発表文では「震災の影響は一定程度発生すると見込まれるが、相応の期間利益を確保できる見込みとなったため」としている。
被災した半導体の岩手工場(岩手県北上市)は操業再開に向け、一部製造設備の運転確認作業を28日から始める。同工場は、カメラやテレビなどに搭載されるシステムLSI(大規模集積回路)を生産。
一部製品は、大分、姫路、加賀の工場で代替生産を始めた。
中小型液晶パネル(3.5世代サイズ)の工場(埼玉県深谷市)は復旧までに1カ月を要する見込みは変わらず、石川県の工場で一部製品を代替生産し始めた。

<三菱電機>1拠点
監視カメラなどを生産する工場(福島県郡山市)の建物が地震で損傷し、停止中。家電を生産する群馬県太田市の工場は停電で5日間休業したが、今週から計画停電の時間帯を除き、通常操業に復旧した。

<日立製作所>5拠点
発電システムなどの工場(茨城県日立市)、エレベーターやエスカレーターの工場(同ひたちなか市)が停止中で変わらず。
液晶ディスプレーの工場(千葉県茂原市)は4月初旬に復旧する見通しで変わらない。
自動車用リチウムイオン電池の生産開発子会社「日立ビークルエナジー」(茨城県ひたちなか市)の工場は、28日から生産を再開する。
23日から電気や水道のインフラが順次、回復したため業務を再開し準備を進めている。
震災または停電で操業停止した拠点のうち、家電や情報制御システムの2工場(日立市)とルームエアコンや冷蔵庫の工場(栃木市)が操業を22日までに再開。
自動車関連機器の2工場(茨城県ひたちなか市と福島県伊達郡)は25-26日にかけて操業を再開する。

<ソニー>12拠点
操業停止中の拠点数は12で変わらず。液晶テレビの組立工場(愛知県稲沢市)や、静岡、愛知、大分の工場が月末まで生産を停止する。
半導体レーザーやリチウムイオン電池、ブルーレイディスク、などを生産する宮城、福島、茨城などの工場も操業停止中。

<信越半導体>1拠点
半導体の基板材料であるシリコンウエハーメーカー世界首位。
最大拠点である白河工場(福島県西郷村)が24日現在も操業停止中だが、復旧の見通しは立っていない。
安全最優先の上で、再開を目指す。

<SUMCO>1拠点
シリコンウエハーメーカー世界2位。山形県米沢市の工場が操業を停止したが、主力工場は九州各地(佐賀県伊万里市など)にあり、 台湾にも拠点があるため、供給のためのバックアップ体制を検討中。

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