緊急分析:日本ハイテク企業の東日本大震災の影響度⑦

筆者が日本のメディア(半導体産業分野)の中で最も信頼し、最も日本で優秀なブルームバーグ社の中島記者の『東日本大震災』の電機メーカー被災状況を非常に良くまとめた最新(情報更新)レポート第三弾である。

【ブルームバーグ社の最新報告書】
電機各社:東北・関東地域の工場操業状況,復旧急ぎ一部再開-一覧(1)
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920010&sid=aXbRprFGBy.s
2011-03-28 10:55:09.545 GMT

【記者:中島三佳子】
3月28日(ブルームバーグ):東日本大震災から2週間以上が経過し、被災または停電の影響を受けた電機各社は、東北・北関東などの地域で工場の復旧を急いでいる。
週末までに、工場内の安全点検や通電の確認作業後、一部生産を再開した企業の動きが活発化している。
ブルームバーグ・ニュースが、各社の公表と取材に基づき集計した地震、停電、物流停滞の影響による工場の操業状況などは、午後6時現在で以下の通り。社名の右横に、生産停止中の拠点数を記した。

<日立製作所>3拠点
28日夕の発表によると、操業停止中の工場数は先週の5から3に減少した。発電システムなどの工場(茨城県日立市)、エレベーターやエスカレーターの工場(同ひたちなか市)、液晶ディスプレイの工場(千葉県茂原市)が停まっている。
茨城県、栃木県、福島県などにある計9工場は、28日までに通常操業に復旧しつつある。
同社は地震発生の11日、24時間体制の「原子力緊急対策室」を設置。
東京電力の福島原発事故対応を支援するため、グループで1000人以上の社員が対応に当たっている。
さらに、東電の火力発電の稼働再開のためにも、約150人の技術者を派遣した。

<東京エレクトロン>1拠点
停止した2工場のうち、熱処理製膜装置の工場(岩手県奥州市)が先週末から一部操業を再開。28日現在、停止中の工場数は1になった。
半導体製造の生産ラインに使われるプラズマエッチング装置などを生産する工場(宮城県宮城郡松島町)が停止中で、再開に向け準備中。
一部製品の代替生産をするため、山梨工場(山梨県韮崎市)の体制を整備している。

<ルネサスエレクトロニクス>3拠点
28日現在も、半導体回路をシリコンウエハー上に焼き付ける前工程の3工場が停止中。
地震で国内22拠点中8拠点が操業を停止したが、現在、停止しているのは那珂工場(茨城県ひたちなか市)で、7月から一部限定で生産再開を目指すと28日発表した。
高崎工場(群馬県高崎市)と甲府工場(山梨県甲斐市)の2工場も停止しているが、計画停電終了後、復旧準備に着手する。

アーキテクトGD社の見解⇒ルネサスエレクトロニクス(旧ルネサステクノロジ側)は、台湾TSMC社とのファウンドリ契約している。
東日本大震災で、那珂工場が稼働出来ない対策として、緊急のキャパシティー確保に、シンガポールのグローバルファウンドリーズ社に手を打つような戦術だが、TSMC社とグローバルファウンドリーズ社(IBMプロセスの流れ)のプロセス互換は無い。
何がここにあるかと言うとライブラリーを再度、グローバルファウンドリーズ社向けに用意(または先方が準備)する必要があり、開発リソースと資金+期間を考えると筆者はこのプランは得策ではないと考えている。
仮に、1年以上の長期視野を前提に考える策であれば、有効的である。
但し、ルネサスエレクトロニクスは、自社生産のウェハ価格よりはるかに高い供給を受ける事になることが予想され、自社内利益を圧迫することになる。
7月稼働(ここからプロセスの拡散工程で2~3ヵ月を設定)であるならば、トータルの戦略で冷静に対処して欲しい。
世界の主要な自動車メーカー側のプレッシャーは、相当なものである事は、何度もデリバリー・トラブルを掻い潜ってきた筆者は、ルネサスエレクトロニクスの苦渋の判断も良く分かる。
アーキテクトGDでは、このようなクライシス対応プログラムをシステム企業と半導体企業に提供しており、今回の東日本大震災でも適応中である。
ここが、調査会社が知らないリアルな状況を理解しているということなのである。

※関連記事:ルネサス:シンガポールと台湾企業に自動車半導体など生産委託を検討
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920010&sid=aY6oA_vuH9L4


<信越半導体>1拠点
半導体の基板材料であるシリコンウエハーメーカー世界首位。
最大拠点である白河工場(福島県西郷村)が、地震発生以来、28日現在も操業停止中。復旧の見通しは立っていないが、安全点検中で、早期の操業再開を目指す。

<SUMCO>1拠点
シリコンウエハーメーカー世界2位。地震で山形県米沢市の工場が停止しているが、復旧準備中で早期再開を目指すと28日発表した。
主力工場は九州各地(佐賀県伊万里市など)や台湾にあり、これらの拠点でバックアップ生産を始める予定。

<エルピーダメモリ>なし
28日、半導体メモリーのDRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)の供給体制は「7月末まで問題は発生しないと確認した」と発表した。
8月以降も「大きな支障は発生しない」としている。基板材料であるシリコンウエハーメーカーの信越半導体など複数の取引先と代替案を協議中。
DRAMは、パソコン、スマートフォン、デジタル家電などに欠かせないメモリーで、同社の国内工場(広島県東広島市)と台湾の工場は 通常通り操業中。
検査・組み立てを行う後工程の工場(秋田市)も16 日からほぼ通常通り。

<富士通>1拠点
半導体回路をシリコンウエハー上に焼き付ける前工程の3工場(福島県会津若松市の2工場、岩手県岩手市)が震災や停電で操業停止 していたが、会津若松の2工場は28日、一部操業を再開したと発表。
岩手工場は4月3日から一部の操業再開を目指す。
デスクトップパソコン、サーバー、プリンターの工場(福島県伊達市)は先週から一部復旧。そのうちサーバーの生産は28日から完全に再開した。
デスクトップPCは、島根県の工場と福島県伊達市の2工場に分けて生産している。

<ソニー>12拠点
操業停止中の拠点は22日以来、12のままで28日現在も変わらず。
部品などの調達に支障が出ている液晶テレビの組立工場(愛知県稲沢市)のほか、各種放送・業務機器の工場(静岡県湖西市)、ビデオカメラやデジタルカメラの工場(愛知県額田郡)、デジタル一眼カメラ用レンズや携帯電話の工場(岐阜県美濃加茂市)、マイクロホンやヘッドホンの工場(大分県速見郡)の計5工場は月末まで生産を停止する。
半導体レーザー、リチウムイオン電池、ブルーレイディスクなどを生産する宮城、福島、茨城などの工場も操業を停止している。
被災地には、ラジオ3万台、乾電池50万本、テレビ125台、毛布1200枚などとともに、地方自治体、NGO(非政府組織)などの各種団体に送付した。24日までに集まった義援金や製品提供などの支援は総額で10億円相当。

<パナソニック>非開示
22日以降、液晶テレビの組立工場(栃木県宇都宮市)と、デジタルカメラ用のレンズやSDメモリーカードなどを生産する工場(山形県天童市)が、一部操業を再開したと発表した。パナソニック電工の電子材料の工場(福島県郡山市)は23日から操業を再開している。

<東芝>2拠点
2拠点で操業停止となっている状況は22日以来変わらず。
被災したシステムLSI(大規模集積回路)生産の岩手工場(岩手県北上市) は操業再開に向け、生産ラインの一部製造設備の運転確認作業を28日に開始。
一部製品は、大分、姫路、加賀の工場で代替生産を始めた。
中小型液晶パネル(3.5世代サイズ)の工場(埼玉県深谷市)は復旧までに1カ月を要する見込みは変わらず、石川県の工場で一部製品を代替生産し始めた。義援金は5億円相当。

<NEC>なし
地震で操業停止した5工場は、23日から順次、生産を再開した。
通信機器の生産2工場(福島市、岩手県一関市)、電子部品を生産する宮城県の2工場(仙台市と白石市)、POS(販売時点情報管理)システムなど業務用端末や一部通信機器の工場(宮城県白石市)が、電力や水道の復旧を受けて生産を再開した。

<三菱電機>1拠点
監視カメラなどを生産する工場(福島県郡山市)の建物が地震で損傷し、28日現在も停止中で変わらず。
家電を生産する群馬県太田市の工場は、先週から計画停電の時間帯を除いて通常操業に戻った。
義援金は5億円を拠出する。

<セイコーエプソン>3拠点
福島原発事故の避難エリア内にある業務用通信基地局向け水晶デバイスの工場(福島県相馬市)と人工水晶を作る青森工場(青森県八戸市)は、代替生産を検討中。
一時停止した秋田工場(秋田県湯沢市)ではプリンター部品、水晶デバイス、金型冶金工具などの生産を19日以降、順次、再開した。
同社の碓井稔社長は地震発生直後に「総合対策本部」を設置。
碓井氏は、被災した4工場など東北の各拠点との連絡などで陣頭指揮を執っている。
対策本部は毎夕開き、情報収集と代替生産など今後の対策を協議しているという。

<TDK>1拠点
操業を完全停止しているのは、携帯電話のサブパネルなどに使われる有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)の工場(茨城県北茨城市)のみ。
4月中旬をめどに一部再開を目指すと25日に発表した。
東北・北関東にある計24工場のうち、震災で一時操業を停止したコンデンサー(蓄電器)など各種部品の工場が集中する秋田県や岩手県の工場は順次、生産を再開しているが、計画停電の影響を受けている。

<村田製作所>3拠点
電子部品のフィルタやコイル製品などの工場(宮城県登米市)は、4月上旬から再開予定。圧電製品や高周波デバイスの工場(宮城県仙台市)は、主力の金沢の工場(石川県白山市)で23日までに代替生産を始めた。
コンデンサー(蓄電器)の工場(栃木県小山市)は、復旧の準備を進めている。

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