緊急分析:東日本大震災から検証するセイコーエプソン事業の未来リスク

セイコーエプソンは、長野県諏訪に本社を置く日本を代表する企業である。
同社の半導体・電子部品の主力工場は、集中して東北地区に拠点がある。
長野本社を中心に配置したサプライチェーン構築であるが、今回の東日本大震災で同社の地政学上のリスクが表面化した。
西日本には、半導体・電子部品の製造拠点を持っていない。
同社の半導体の売り上げは減少を続けているが、同社の強みは電子部品であり電子デバイス事業を支えている。
このブログ内でも同社の状況は報告しているが、福島第一原子力発電所から16キロのエプソントヨコムの工場は、長期稼働出来ない状況より、今度の原子力発電所の状況では、事業所閉鎖も念頭に考えてセイコーエプソンは、お客様への部品供給対策を講じて置くべであろう。
同社の主力事業であるプリンターも部品の内製比率は高いと推測され、東北地区の部品拠点戦略の再構築は急務である。

【検証➀⇒半導体】
セイコーエプソンの酒田工場で稼働比率の高い米国マキシム社のファウンドリービジネスである。
米国企業は、危機管理がしっかりしており、地震直後から海外ファウンドリーへのシフトを始めている。
セイコーエプソンにとっては、山形県酒田市にある200mmラインを活用した2007~2012年迄の長期契約であったので同社にとって、極めてダメージは大きい。

※関連記事:UPDATE1: エプソン<6724.T>、米半導体マキシム社向け製造サービスを受託
http://jp.reuters.com/article/domesticEquities2/idJPnTK513160020070207
※関連記事:MAXIM ANNOUNCES PARTNERSHIP AGREEMENT WITH
EPSON OF JAPAN FOR THE FABRICATION AND SUPPLY
OF MIXED-SIGNAL SEMICONDUCTORS
http://pdfserv.maxim-ic.com/en/pr/Epson_Fab_020707.pdf

【筆者ブログ内予言の検証】
●2011年3月12日土曜日
緊急分析:東北地方太平洋沖地震+長野県北部同時多発地震(スーパー広域大災害)
北関東・東北地区での巨大地震発生における半導体工場の影響の可能性があるのは次の通り。
セイコーエプソン酒井(マキシム ファンダリ)~省略

●2011年3月14日月曜日
緊急分析:日本ハイテク企業の東日本大震災の影響度➀
世界半導体とハイテク市場の影響度を緊急分析する

※重要情報(3月18日報告書):Maxim: Japan power outage hurts partner production
http://fukushima.org.ua/maxim-japan-power-outage-hurts-partner-production/

【検証➁⇒電子部品】
ソースは、このブログ内で紹介しているブルームバーグ社中島記事である。

<セイコーエプソン>3拠点
福島原発事故の避難エリア内にある業務用通信基地局向け水晶デバイスの工場(福島県相馬市)と人工水晶を作る青森工場(青森県八戸市)は、代替生産を検討中。
一時停止した秋田工場(秋田県湯沢市)ではプリンター部品、水晶デバイス、金型冶金工具などの生産を19日以降、順次、再開した。
同社の碓井稔社長は地震発生直後に「総合対策本部」を設置。
碓井氏は、被災した4工場など東北の各拠点との連絡などで陣頭指揮を執っている。
対策本部は毎夕開き、情報収集と代替生産など今後の対策を協議しているという。

【エプソンーエプソンHPから➁の検証】
■エプソントヨコム株式会社福島事業所
所在地 : 福島県南相馬市小高区飯崎南原65-1  製造品目 : 水晶発振器
●状況 : 東京電力福島第一原子力発電所から直線で16Kmの距離にあり、避難エリアに該当するため事業所を閉鎖。
現時点では、生産再開の時期は未定。

【アーキテクトGD社によるセイコーエプソンの株価評価】
このデータは、ブルームバーグ社の金融端末のリアルタイム性のあるデータベースと機能を活用し評価したものである。
2007年~東日本大震災後の評価を行ってみた。
セイコーエプソンの株価推移(下落)については、筆者があえて語る余地もない。
これは、未来市場に対する成長ビジネスが無いがゆえにである。
セイコーエプソンの今後展開は、Google社のクラウドブームに相乗りする戦略を取ることが推測されるが、これは同社の主力事業プリンタ⇒”インク(消耗品)”のビジネスモデルを中・長期視点では、崩壊させる事に繋がる。
NYダウ+日経平均⇒セイコーエプソンの株価トレンドは、”ウェーブフォーム”上はマクロ経済の相関性のマッチングは取れている。
NYダウは、リーマンショック以降は強い回復を示し、日経平均も底に張付きながら水平飛行を続けている。
セイコーエプソンの株価回復の兆しは見られず、現在は東日本大震災の株価に対すマーケットの評価は変わっていないが、このブログで検証している課題が長期化すれば株価(↓)に影響する事が予測出来るだろう。

未来市場に対応した戦略と連動するプリンター事業以外の新事業の創出が同社に求められる。
筆者は、同社に対しては同社の強み(特許とファクトリー用の産業用ロボットの応用)未来産業として、『ロボティクス』事業注力を就任して10日目の碓井社長に進言した事を覚えている。
この面談は、筆者の日本産業強化策の1つとして、神奈川県松沢知事の名代として、国内最大手の製薬会社とセイコーエプソンをエンゲージさせる時であった。
【筆者の過去連載コラムの検証⇒提言】
『日本の将来はロボにあり?』を再度、お読み下さい。
※重要記事:半導体ウォッチ(16)世界金融危機から始まる「ニッポン産業乱世」(前編)2009/1/9
http://monoist.atmarkit.co.jp/feledev/articles/siliconeswatch/16/siliconeswatch16b.html

【2007年時点のセイコーエプソンの特許評価】
2007年にアーキテクトGD社が独自にセイコーエプソンの特許評価を行ったものを公開する。
同社はキヤノンと同じ様に、知的財産強化を積極的行っている企業である。
この特許と技術+新ビジネスモデルが、うまく連動すれば同社の成長は可能である。
特許評価は、企業の未来成長を占う1つの指標であり、筆者は企業の戦略を練り上げる前に、必ずこのベンチマークを行う。




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