シリーズ1:日本半導体産業復活への処方箋➂

▮未来に磨け!新産業事業価値創出能力
世界の半導体導体業界では既存市場の成熟化を背景に半導体メーカーが生き残りを賭けてシェア争奪戦を展開している。
価格を下げて潜在需要を掘り起こす事で数量を増やして売上金額を確保する方向に動いている。当然利益は薄くなる。
キャッシュ・フローは悪化し、事業価値は低下していく。このような市場変化の中、持続的にキャッシュを生み出すことの難易度は増す。このような環境において事業グループの最高責任者は必死になって利益を生み出そうと努力を重ねている。
しかし、その事業グループ最高責任者一人では立ち行かない。
当然、企業組織総合力で立ち向かう。その企業組織の中において事業グループ最高責任者の片腕となりサポートする立場で事業価値創出を目指す実行部隊はどこだろうか? 
開発・設計・技術・品質保証などのエンジニアリング部門ではなく、セールス部門でもない。
もちろん経理・財務、人事、総務などのスタッフ部門でもない。それは事業グループのマーケティング部門なのだ。
さらにそのマーケティング部門には「戦略マーケティング・スキル&センス」が実装されていなければ大きな成果は期待できないのである。 

当社(AGD)は「戦略マーケティング・スキル&センス」を実装したマーケティング組織を事業グループに保有すべきである事と、そればかりでなく事業グループ構成員全員いや企業全社員が「戦略マーケティング・スキル&センス」を完全に自分のものにしながら、地球資源・エネルギ・環境配慮型の事業価値創出能力を磨くべきである事を強く提唱する。 

▮まずプロフェッショナル人材創育を
企業の「戦略マーケティング力」強化は一朝一夕には果たせない。
「戦略マーケティング力」それは元をたどれば、その企業を支える人の資質と潜在能力に帰着する。組織図に戦略マーケティングを書き込むのは簡単にすぐ出来るが、その戦略マーケティング職務を執行するエグゼクティブ、マネジャー、マーケター各階層の人々がプロフェッショナルでない限り、その組織は無能力であり、組織解体は時間の問題と言える。
このようにならないためにもまず企業組織の階層ごとに戦略マーケティング・プロフェッショナルである人材を創育することを先行しなければならない。
では、戦略マーケティング・プロフェッショナル人材創育は、どのようにしたら良いだろうか? 
アプローチとして3つ考えられる。 

1つは専門の教育機関の戦略マーケティング教育コースを受講することである。
実際に米国、カナダ、英国には技術エグゼクティブ向けの戦略マーケティング教育コースを持つ教育機関がある事をネット調査で確認している。事情が許せば参加してみるのが良い。
残念ながら日本では技術者向けに日本語での戦略マーケティング教育コースを開講している教育機関はなさそうである。
日本での戦略マーケティング教育機関の出現に期待したいところである。

2つ目は米国系エレクトロニクス企業で活躍しているバリバリの戦略マーケティング・プロフェッショナルをハイヤリングして技術部門の中の戦略マーケティング・マネジャーとして迎え入れる。
そのハイヤリングされたプロがリーダーシップをとりながら部門スタッフの「戦略マーケティング・スキル&センス」を育成していく。

3つ目としては、もし業務提携している米国系エレクトロニクス企業があり、そこに戦略マーケティング組織があれば、その提携先企業の了承のもとにマーケティング素養がありそうな技術者をその提携先企業の戦略マーケティング組織で一定期間、働かせてもらうことである。
そこで「戦略マーケティング・スキル&センス」を身に付けて戻ってきて技術部門スタッフの「戦略マーケティング・スキル&センス」の創育に専念してもらう。 
企業情報漏洩リスクの対策とか考えなければならない点はあるが、出来ればこれをその企業間で制度化して留学制度ならぬ留社制度として積極的に利用していく方法も考えられる。

▮続いて新組織の創設を
そして戦略マーケティングのプロが育ってきたら、次の段階でこれらのプロからなる「戦略マーケティング・スキル&センス」を実装したマーケティング部門を織り込んだ事業グループ新組織へと大きく組織変更を実施するのである。
そのときには全体の組織体制も見直しを図り全体と個を最適設計する。この新生マーケティングによる新組織体制の総合電機メーカー半導体子会社/事業部は、海外リーディング企業の強さの源泉である、マーケティング主導ビジネス力、組織ビジョン求心力、マーケティング戦略策定能力、オリジナル製品企画力などがその企業のコア・コンピタンスとして新たに重装備される。
その時その企業の半導体ビジネスはすでに世界市場を戦略ドメインとして、オリジナル製品企画のASSP製品がその企業の半導体ビジネス成長の一躍を担うキー・プロダクトになり得るマーケティング戦略を実行できる企業となる。
この変革を理解しそれに裏書をするのは言うまでもなくトップ・マネジメントである。
トップ・マネジメントの「戦略マーケティング・スキル&センス」を客観的に見定めて助言・提言できる参謀役がいれば、鬼に金棒であると言える。

▮そして戦略マーケティング実践を
作れば売れる右肩上がりの二桁成長の時代から、良くても5%程度の低成長市場となり経営戦略・事業戦略としてのマーケティングがますます重要になってきている。
経営戦略・事業戦略とマーケティングが一致する必要がある。
つまり、事業経営責任者とマーケティングが結びつくもので、マーケティングと事業経営責任者とが表裏一体の関係になる。 これが本来の戦略マーケティングである。 

戦略マーケティングの目的は何かと訊いた時に、”継続的な競争優位性を確保するため”と教科書的な答えが返ってくる。
では”継続的な競争優位性を確保するため”が手段だとすると、その目的は何かを考えてみよう。 それは”将来事業価値の創出のため”とするのが正統であろう。
事業価値…事業により生み出す価値は将来キャッシュ・フローの増大と考えるのが分りやすい。
そして戦略マーケティングは将来キャッシュ・フローを生み出すための投資判断を事業経営責任者が下す際のビジネス・プランや関連情報を提供しサポートする。

これまで戦略マーケティング・ドメインをイメージ化したものは皆無であった。
よって、ここにAGDが定義する戦略マーケティング・ドメインを提唱したい 。 この具現化したドメインは当社のWEB会員登録して頂ければ、閲覧することが出来る。
このドメイン・モデルでの肝は事業価値と戦略マーケティング・データベースにある。
是非とも、このストラクチャーを頭の中へ有機的に深く浸透させて、理論(左脳支配)は必要最小限に、構想力(右脳活用)はフルに発揮し、戦略マーケティングを実践して事業価値の増大へと邁進すべきである。

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