シリーズ2:日本半導体産業復活のソリューションと警鐘 ➄

産業タイムズ社半導体産業新聞が韓国サムスン電子の経営上層部の圧力によって、お蔵入りさせられた2005年の連載コラム第30回「新世紀IT 革命の舞台裏~アナリストはズバリ直言する!!」のオリジナル原稿を公開しよう。
日本国憲法第12条でも保障されている「表現の自由」を一番主張するマスコミ自体が他国企業の外圧に屈したことになる。
第28回、29回のコラムが出た直後、大手半導体製造装置企業の会長に誘われ、東麻布のアメリカン倶楽部で2人で会食に誘われた忠告されたことを覚えている。
それは、サムスン電子の李健煕(イゴンヒ)会長が筆者のコラムを読み激怒しているというものであった。
(この記事は、日本語であったが即日のうちに、ハングル翻訳され韓国本社に送信されたようである。)
日本企業が注意を怠ったこと、日本として戦略といことを学ぶべき(戦略的企業として賞賛すべき)ものと警鐘が、当時の連載の目的であった。
2010年の今でこそ、一般誌までサムスン電子企業実態や弱点、死角を特集する記事も多いが、2005年当時は皆無に等しかった。

※サムスン関連の一般誌 ZAITEN「サムスンの急所」
http://www.zaiten.co.jp/blog/zaiten/cat10/

何故、筆者がこの時期に、お蔵入りの原稿を公開するのか?
時は今、韓国哨戒艦の沈没事件でアジアに緊張をもたらしている。
筆者は、太陽政策を推進する故盧 武鉉(ノ・ムヒョン)大統領時代に朝鮮半島が統一されなければ、近未来において朝鮮半島で戦争が勃発すること5年前より懸念していた。
そして、当社(AGD)のコラボレーション・スペース内で、「メモリ価格上昇シナリオの検証(北朝鮮38度線南下予兆)」ということで、2年前からも取り上げていた。

もう1つ、サムスンの懐の深さを紹介しょう。
2007年に、筆者の仕事のパートナーに、大阪城見の某ホテルで韓国サムスン電機幹部社員(社長以外全幹部が参加)の講師として、参加依頼があり、この方とのお付き合い上、この研修会講師として参加した。
最初の名刺交換時点は、重々し雰囲気であった。
幹部社員1人が、「あなたがあの有名な豊崎さんですか?韓国で日本人といえば、あなたが一番有名ですよ。当社の中では・・・。」と意味ありげな挨拶をされた。
読者の皆さんはお気づきだと思うがこれは2005年の連載コラムでの事を指しているのである。
研修が始まり、私のパートではサムスンのリスクと未来戦略を提示し、そこでは質問攻めとなったことを記憶している。
夜まで続いた「研修の後、会食となり会食場所は、大阪の鶴橋。
鶴橋といえば、お決まりの韓国焼き肉のご本山である。
宴席は、韓国の焼酎で始まり、ここから筆者との日韓戦(お酒)が始まった。
1人の幹部社員が近づきお酌をしながら、「あなたの分析と未来戦略はとても素晴らかった。当社にもシンクタンクのサムスン研究所があるが、今まで、あなたのような分析を見た事がない。だから、韓国本社で、社長以下全幹部と開発のゼネラルマネージャーにも同じ講演をして欲しい。」ということを言われた。
この数カ月後、韓国サムスン電機本社に訪問することになった。
そこで、目にしたものは、国際会議場と同じ施設(設備)に、専門の同時通訳が2名待機していたことである。
言いたいことは、寛容というより、ビジネス的に成長出来る材料があれば、たとえ敵であったとして使うというのが、サムスンであり、これが同社の原動力の根源であろう。

朝鮮半島の平和的統一とウォン高こそ国家戦略なり
サムスン電子撃破と題して、過去2回は、日本半導体企業に向けた提言を行ってきたが、企業だけによる推進では解決し難い、日本政府主導のもと、日本国全体で取り組むべき課題がある。
最後に、打倒サムスン電子に向けた日本政府の役割についても、述べることにする。
1997年年に発生したアジア通貨危機から始まる、米国政府主導のIMF の通貨対策、いわゆる金利、為替の実運用によって、日本にとって不利益な状況が続いている。
日本国政府の役目として、まずは、国際的な討論の場で、これを是正すべきである。
また、日本国として日本エレクトロニクス産業と国益を守るため、事業体系とセグメント毎に一つのベクトルを向いた、真のオールジャパン企業連合(旧財閥系企業の再統合)を再構成し、力を終結させなければならない。
これも政府・企業一丸となった、ハイテク日本国としての使命である。
企業間としては、インテルとエルピーダ、また米国政府や米国工業会( SIA など) との関係強化を図り、ファーストティアの世界トップPC メーカーのプロキャメントを、日本陣営のビジネスに取り込むことで、日本のPC ・デジタル家電・携帯電話企業も、サムスン電子に対して、国益を守る戦略的な方法でプロキャメントを行う必要がある。
また、日本の半導体企業は、サムスン電子のように徹底した人材管理、情報統制を敷き、自ら集めた情報を分析し、競合企業のシェアを確実に奪える戦略と組織作りを行う必要もある。
さらに、サムスン電子が、収益性を高めるために、前工程、後工程で、どのメーカーの製造装置を採用し、どの外部委託企業( デザインハウス、パッケージ、テスト、メッキなど) とパートナーを組み、どのようなメカニズムのサプライチェーン構造になっているのか、ベンチマークすべきである。
ここから必ず、「打開策」が見つかるはずだ。
ただ、戦略を実行する上で、一つ、忠告しておかなければならない。
サムスン電子は、今世界でも優れた韓国企業の1つであり、その背景には軍隊と同じ組織力(忠誠)と儒教がある。
日本人は、原点に返り、孫子の兵法を再度学ぶ必要がある。
彼らの怖さは、謙虚の仮面の下に隠れた強かさであり、これが最大の武器であると言える。

▮戦略とは何か?
このブログでは、サムスン電子を一例に取り上げたが、サムスン電子は野心的な戦略マーケティングを武器にした企業であり、筆者は素晴らしい企業であると絶賛したい。
日本から見たサムスン電子は、カリスマ経営者の復帰、設備投資能力、ターゲット設定、現在世界の中でトップレベルの企業である。
経済・ビジネスは、リアルな戦争そのものである。
戦争に負ければどのようになるか、敗戦国として戦後のどん底から這い上がって来た日本人ならば分かるはずであろう。
今は、戦後教育によって封印された日本人のDNAが眠っているだけなのである。
日本政府には、設備投資や法人税優遇など真剣にハイテク産業強化の明確なる政策を打ち出して欲しい。

※サムスン電子のマーケティング関連記事
ニッポンに圧勝したサムスンのグローバル戦略
http://monoist.atmarkit.co.jp/fpro/articles/forefront/05/forefront05a.html

「もっとマーケティング力の強化を」
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/TOPCOL/20051205/111327/

上記記事のAGD考察
上記情報より読み取れるのは、サムスン電子のトップマネジメントがマーケティングの重要性を十分に理解してマーケティングの 強化を図っているということに言及できる。
200人規模のマーケティング要員がメモリーだけで必要なのかと端的に捉えがちであるが、ダイナミックなビジネス特性を有する メモリーであるからこそ、優秀な専門マーケターの極め細やかなマーケティング業務アサインがビジネスの成否に大きく関わるのである。
メモリー・プライス・リーダーとしての価格戦略策定、タクティクス(戦術)としての短期間に変動する市場価格をトラッキングしての価格見積及び、PC、携帯電話など大きくデマンドが変動する最終製品の需要予測、全顧客へのメモリー安定供給のための納期フォローなどを行うビジネス・マーケティング業務および次世代メモリー市場導入のための戦略マーケティング業務が 主となる。
世界6地域 (韓国、中国、台湾、日本、欧州、米国 )、サムスン電子のメモリー製品16ファミリーのマトリックスで各最低1名を割り 振っても、あくまで単純計算ではあるが 6 地域 x 16 ファミリー x 2業務 = 192名となる。
マネジャーも含めれば200名以上になる。

「日本半導体復権への道
http://dappangumi.exblog.jp/746648/

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