シリーズ2:日本半導体産業復活のソリューションと警鐘 ➁

▮ハイテク調査会社の裏
読者の皆さんは、調査会社の予測実績(発表と結果の両方)をきちんとトラッキングしているだろうか?
リーマンショック以降の傾向として、調査会社は四半期どころでなく、毎月上方・下方修正を行っている。
フィジカルイヤーの終わる時期に予測を修正に、何事もなかったようにデータベースが書きかえられている。
それで、予測精度が正しいという調査会社も多いように筆者は感じている。
調査会社の予測トラッキングしてみると、その企業に有償で情報を求めて良いのか良くわかるだろう。
これも読者の皆さんの限られた調査予算を有効的に活用するための自己防衛の策である。

※調査会社・業界団体の統計データを格付けしたものである。
読者の皆さんのお仕事の目安として頂ければ幸いである。
半導体ウォッチ(11)
混沌とする2008年世界半導体市場その先行きは?
http://monoist.atmarkit.co.jp/feledev/articles/siliconeswatch/11/siliconeswatch11c.html

AGD社2009年予測精度を検証
2009年世界半導体総売上高の確定値は、WSTS(世界半導体市場統計)2244億米ドルで、AGD社の夏季修正予測は2213億米ドル(対前年比マイナス11%予測)で、その精度誤差は“31億米ドル”であった。
下の図表は、AGD社世界半導体予測のオリジナル版である。
世界半導体市場V字回復の原動力になった市場地域は、中国を始めとする東アジア経済圏と新興国、半導体市場全体に影響のあるDRAMとNAND型フラッシュメモリーのASP(平均単価)の改善であった。
牽引アプリケーションとしては、主にPC市場、特にネットブックなど新カテゴリーのモバイルPCとコンスマー用途としてのWindows7の販売が、景気低迷時にもかかわらず、比較的好調だった。
地域としては、中国に目を向けると家電下郷(対象となる製品は冷蔵庫(冰箱)や洗濯機(洗衣机) 、カラーテレビ(彩电) 、エアコン(空调)、電子レンジ(微波炉)、PC(计算机)、携帯電話(手机)と世界一の販売台数となった自動車であった。
日本は、経済対策(自民→民主政策引き継ぎ)家電のエコポイント制度やETC割引などによる買い替え促進需要に効果が表れた結果となった。


※過去検証
半導体市場は成熟産業、日本企業は需要創出を
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003013&refer=jp_us&sid=aQ8EebyygUhg

▮AGD社の世界半導体未来予測
2010年4月13日AGDは、2010年年世界半導体未来予測を2625億米ドル(対前年比プラス17%)と発表した。
世界半導体の市場規模は、半導体バブルピークの2007年の2556億米ドルを69億米ドルを超えると予測となる。

注目すべきデバイス市場としては、スマートフォンやiPadなど電子書籍端末により、DRAM市場が前年より大幅増が見込め、多くのDRAMメーカーは2010年の設備投資を増やすことを計画している。
電子書籍端末はApple社独走が続くのではなく、中国や米国のAndroid搭載の超低価格な電子書籍端末がシェアを伸ばし始めてくる。
iPadは、ブームの火付け役としての役目を果たすが、PCの世界と同様(WindowsにMac OSが敗北)この市場も、安い高機能端末を開発したものが、覇権を握るだろう。
Android対応アプリケーションも次々にリリースされてくる。
このシナリオを半導体メーカーが読み間違えるた場合半導体市場は、Appleショックを引き起こすことになる。
経済の牽引役としては、世界半導体市場の原動力となる中国は、昨年の家電下郷の4000万台の実績に加え、自動車下郷も実施され、上海万博後は中国の渤海地域と内陸に対する投資が活発になり、経済はさらに活発化する。
中国は、内需政策を強化し、中国国内の液晶テレビは1億4000万台の需要が望める。
AGDは、中国向けの「次世代超解像エンジン」の開発が終わり、デザイン・ウィンを中国ローカル企業に展開中である。
中期的には、2012年“第一次チャイナショック”、それはレアアース・レアメタルの日本への上限枠輸出規制。(一部輸出停止などが連動、さらに、米国戦略物資指定されたSiCが輸出規制と新産業領域となるパワー半導体の芽を摘むことが予測)
これは将来のビジネス成長を抑制する懸念材料となる。
さらに、2012年は2005年と世界人口を比較すると⒇%増加することになり、食糧・エネルギー・地下埋蔵資源(原油・レアアース・レアメタル)などの需給が逼迫し、、加えて国家間のナショナリズムが台頭し、これに経済摩擦が密接に連動する。
2015年以降の電気自動車の本格普及により、日本はリチウム資源確保に買い負けし、2次電池産業も衰退が始まり、グローバルなポータブル電子機器企業は、電池確保こそが企業存続となる。
よって、サスティナビリティーは避けては通れない。
2013年は半導体業市場は大クラッシュする。
2013年~2014年には、”第二次チャイナショック”(経済の一時的成長減速による社会的混乱)が起こり、世界経済にリーマンショック以来の大規模な経済危機が発生する可能性が高い。
日本とは、現在の民主連立政権の政治混乱が2015年まで続き、1000兆円超える国家財政(国家破綻に近い)が悪化し、日本企業の経済活動にも大きく影を落とすことになる。

新アプリケーション分野の警鐘としては、3D映像にこの先5年以内に何らかの規制が掛かり、健康被害などが多発し、企業訴訟なども発生する可能性も出てくるので、慎重にこの3Dブームを見極めること必要がある。
今後は、新興国を中心、デジタルネィティブ世代が消費の経済循環をさせる主役となり、従来ビジネスモデル(既成概念)は全て崩壊させることになる。
その未来の代表的事例となるのは、液晶テレビ(放送コンテンツも含まれる)であり、テレビはブロードバンド化により受動的(パッシブ)な受信機から、ガジェット型能動的(アクティブ)なマルチ情報端末ステーションと進化する。
Google TVもこの部類の定義に属する。
これはテレビ機能でないことを皆さんには理解して欲しい。
超薄型液晶パネルや、LEDバックライトや3D機能など過大に、宣伝する日本企業は未来市場から見れば「ずれた戦略」を取っているのである。
未来のテレビは、入力は電波でなくネット、そして映像や情報の出力装置として、昇華するのである。
現状の経営戦略を取り続けるならば、日本ハイテク産業が隆盛を誇った、液晶テレビ、自動車、デジタルカメラなどアプリケーションは、5年後アジア新興企業にその座を全て奪われることになるだろう。

▮AGD社半導体予測シナリオの公開
●中長期的な未来予測シナリオ:世界マクロ環境
『中長期的な世界マクロ経済と情勢』

原油安 → 世界金融機に対しては一時的な減税効果となるが、社会環境の変革と環境技術開発にはマイナスとなる

原油高 → 米国のシェールガス戦略で、2015年内に世界の石油価格は一度大クラッシュし、1バレル40ドル台に突入し、中東ロシアは経済的ダメージを受ける。7年後に価格は100ドル台に再上昇する(15年後には1バレル200ドル突破する)

太陽電池の住宅普及率アップ(直流、マイクログリッド、SiCパワコンディショナー)+プラグイン型ハイブリッドや電気自動車の普及

SiCに米国政府から戦略物資指定を受け、デバイス単体での海外輸出制限

ウォン安から“高”へ → 日本企業にとって好機が到来する(条件は、中国が元切り上げをすれば、Wonはそれ以上に高くなり、日本の製造業に恩恵がある

中国バブル → 日本企業(ハイテク技術:環境・半導体・自動車・ネット)の買収が投資として活発化する

元 vs. 米ドル → 国際通貨基軸のドル神話の崩壊とアジア通貨の元が国際的に台頭してくる

ドル基軸通貨が崩壊し、円高70円台前半/2011年後半となる

米国の中国 対元戦略が明確になる(ドル崩壊)

先進国のシルバー世代の比率増大 → シルバーマーケットの拡大(例えば、ネットワーク医療とヘルスケア)とロボット産業

先進国での外国人労働者の増大(失業者含む) → コミュニケーションが取りにくくなり、犯罪が増加する 、セキュリティーの重要性が増す

世界経済と政治の不安定化 → 安定軸がないことから地域毎の紛争とテロが勃発する(ネットやSNSがトリガーとなり、新興国の現国家体制を崩壊させる)

欧州地域の経済破綻 → PIIGS 、EU加盟国のポルトガル(Portugal)、イタリア(Italy)、アイルランド(Ireland)、ギリシャ(Greece)、スペイン(Spain)のどれかが財政破綻に追い込まれる
EU解体の道へ

北朝鮮が38度線南下戦略を外交カードに使い、メモリ価格上昇と韓国ハイテク産業界のリスク
(今後3~5年は不安定状態は続き、トリガーは政権移譲時、最大のリスクは2年以内に総書記が死亡する事であり、このシナリオの可能性が高い)

中国やインド、ロシアなどの資源新興国の台頭 → ハイテク軍事バランスの不均衡(新興国のハイテク武装と実戦配備し、中国は軍事大国となり米国の存在を脅かし、領土権問題は深刻化する)

犯罪増加、未知の新型ウイルス感染の危険が身近に存在するようになる → 自己防衛策としてのセキュリティ強化&センシング技術の確立とバイオメディカル技術の進歩

ニッチ市場の拡大 → テーラーメイド型ビジネスの多種多様化が加速(例えば医療やヘルスケア)

社会維持・安全コスト増大(効率化) → 自動運転機能の乗り物

デジタル化・ブロードバンド・無線のさらなる発展 → 有線・無線ネットワークの土管化(ブロードバンドのビジネスが主流)

IT社会化によるデジタル・ネイティブ世代の登場 → グローバリゼーションの加速(従来ビジネスモデルの崩壊)

半導体が日用品まで浸透 → 半導体の完全コモディティ化 、ARMプロセッサが世界の電子機器の主流となる
2020年までにARMプロセッサと米国勢の戦争が再燃し、それまでに英国ARMは企業売却するだろう

サイバーテロ、サイバー犯罪の増大 → セキュリーティー強化 (国家レベルの犯罪と諜報活動)

地球温暖化・エネルギーの効率的活用の進展 → クリーンテクノロジへの期待

水・食糧危機と資源枯渇 → 1次産業のハイテク化と監視体制強化、食糧生産現場のセキュリティー強化

保護主義貿易 → ハイテク(環境技術分野)日米中経済摩擦の可能性、中国レアメタル・レアアース問題が更に深刻化

ナショナリズムの台頭 → 自国防衛(防衛・経済・産業など)大規模テロの核拡散の予兆、新興核保有軍事政権の暴走。

米中日の経済摩擦勃発 → ハイテク東アジア構想での経済圏の実現(中国大規模バブル崩壊時期は、2014年)、日本のポジショニングは今後の戦略次第では、最も重要な役割を果たすことになる

中長期的な未来予測シナリオ:ハイテクセクター産業

『中長期的なハイテクセクター産業動向』


日本市場には半導体製造装置の成長材料はない → 中国半導体育成に日本は黒子としての立場で、最後の機会に賭けるべき

最新設備を控えていた半導体市場は、半導体部品が供給不足になる → 世界45FAB閉鎖でキャパ不足(2010年は製造業界は、一時的に完全V字回復するが長期的には低調)

液晶産業も、成熟した → 主役は“チャイワン”液晶企業(製造は中国が拠点、BOE社の台頭)

自動車業界は電気自動車へ加速 → 全方位事業&巨大企業トヨタ自動車もGM社と運命となる
電気自動車でトップを独走するのは、ルノー・日産自動車、BYD社の体制となる
(デジタル家電と同じ、デジタル化と高品質要求体質、メカレスが一気に、日本自動車産業を崩壊させる。特に、レアメタルの確保で電池供給量により、未来のマーケットシェアが上下する)

原油価格は1.5年以内に100ドル台に回復→ 電気自動車とクリーンテック産業を後押し、急速成長させる

太陽電池は結晶系Siがしばらく続き、薄膜系や化合物はまだ先 → 多結晶Si増産と材料価格の下落が要因

照明は、OLED普及には時間かかり、白色LEDが成長分野となる → 液晶テレビへの供給はタイトになる
インテル含む海外半導体企業は、アセットライトにシフト → 半導体設備投資はビック3のみ

22ナノプロセス開発は、日本企業の単独開発はない → IBM&IMEC社プロセスプラットフォーム

DRAM成長は終焉を迎える部品となる → 大量生産・高歩留まりによるビジネスモデルの崩壊

※DRAMからユニファイドメモリ時代へ(MRAM、ReRAM)

NAND型フラッシュメモリは、短期はネットブックPC搭載SSDは成長材料だがビット成長は鈍化、そしてクラウド化で消費は激減する → ブロードバンド化がこの現象を後押しする、データセンター需要でHDD、SSDが成長する(ただしSSD成長条件は、デバイスの書き込み信頼性が更に改善させること)
NANDもフローティングゲートの微細化限界で、2015年頃から3D化が始まる

世界的エコ化でエネルギー効率と低消費電力が追求され、大面積チップのロジックのデザインは激減するで業界再編が加速する


MEMSは物量は出ない、3D複合LSIとしてアルゴリジム実装のシステムLSIと差別化が図られる  → センシングの重要性

太陽電池産業も在庫過剰、価格下落となり、企業淘汰の時代に入る → 未来の世界No1の座には中国企業が君臨する

日本のハイテク産業の生命線であるレアアース・レアメタル資源確保が困難になる → 日本企業の経済活動抑制

クラウドコンピューティングにより、データセンター規模が拡大し、コンテンツ&検索の巨人Google社がM&Aをさらに加速させ、世界を支配する → ITニッポンの完全敗北、国家戦略としての中国ITに期待大、グーグルが日本のデジタル家電企業をコントロールするようになる

スマートグリッド構想は、電力のみららず水も対象になる → 新たなる火種を生み出す

映像の3D化が加速する → 新たな人間の脳と精神に大きな影響を与え、感覚・神経麻痺や知的障害を引き起こす(近い将来、企業は倫理モラルを問われ、企業への賠償責任が発生する、その時期は2015年前。3D TVは、実質的には普及しない)

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