緊急分析:ルネサスエレクトロニクスが100日プロジェクトで下した経営判断ミス

日本の半導体メーカーは、どうしてこのような愚かな経営判断を下すのであろうか?
ルネサスエレクトロニクスは、TELEFUNKENのグループ企業であるTELEFUNKEN Semiconductor International社に譲渡する契約を締結したことを発表し、その譲渡金額は約5300万ドル(約43億円)で、譲渡は2011年5月2日に完了する予定である。
ルネサスエレクトロニクスは、自社の未来ビジョンと成長戦略を持っていないのであろう。


【経緯の分析】
旧NEC半導体⇒NECエレクトロンデバイス⇒NECエレクトロニクス⇒ルネサスエレクトロニクス(ルネサステクノロジと統合)
●広島工場⇒エルピーダメモリへ
●ローズビル工場⇒TELEFUNKEN Semiconductors社へ今回売却

※関連記事:米国半導体工場の構造改革について
http://www.nec.co.jp/press/ja/0104/0902.html
※関連記事:ルネサス、米国半導体工場を独TELEFUNKENに約5300万ドルで譲渡http://journal.mycom.co.jp/news/2011/03/31/028/

ルネサステクノロジ・NECエレクトロニクス⇒ルネサスエレクトロニクスが2010年4月の合併時に開始し、20107月に発表した「100日プロジェクト」による同社の『リストラ』↔”Restructuring⇒再構築 ”を行うはずであった。

※関連記事:リストラ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9

筆者の推測であるが、半導体ビジネスの素人の大手コンサルティング会社とルネサスエレクトロニクスの共同でこの100日プロジェクトを実施したのだろう。
素人が行う”アセットライト”という誰にでも出来るリストラ策が一番手に負えない。
そもそも100日プロジェクトは、旧ルネサステクノロジと旧NECエレクトロニクスの優秀な技術者にとって、ハッピーになるような基本設計がされているのか?
多くの日本人は、リストラを削減と捉えるが、欧米では次なる成長の為の重要な策として、Restructuringを行う。
筆者も国内外の大手半導体メーカーの未来市場に向けた"Restructuring&Reengineering"に主眼を置きコンサルティングを実施し、適用企業は、グローバルで成功の道に向かっている。
その一部をアーキテクトGD社のWEB上に「公開している。
筆者と他のコンサルティング会社の違いは、実ビジネスとサプライチェーン、グローバルでの競合企業・技術や未来成長アプリを理解し、実際に自らが巨大市場を生みだしながら新半導体のビジネスをコンサルティングを受ける企業にデザイン・ウィンした物を提供するからである。
戦略エンゲージ企業と共に、筆者も現場に立ち汗を流すということである。
既に、筆者はシステム企業側立場の場合は、国内外半導体ベンダーのデザインウィン(採用)の仕分けも実施している。
通常のコンサルティング会社は、既定の検証手法でテンプレートにデータを嵌めこみ、体裁を整えたものでしかない。
ここが大きな違いであろう。
筆者は、勝てる見込みのない企業のコンサルティングは、一切受注しない。
成長出来る企業にリソースと戦略を強化し、競合となる企業を倒す方法が得策である。
ルネサスエレクトロニクスは、2011年3月11日の東日本大震災の教訓を実事業に生かし切れていないようである。
今後、2012~2013年世界各地で巨大地震や社会混乱が多発する。
天災や地政学を考え、開発・生産拠点のリスク回避を検討すべきである。

※関連記事:地政学
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E6%94%BF%E5%AD%A6

ルネサスエレクトロニクスは、新環境半導体のSiC参入も表明し、既存パワーデバイスにも注力しているはずである。
常識的な判断をするならSiC未来戦略も考え、旧NECエレクトロニクスのローズビル工場は米国拠点の主力とすべきであり、北関東の工場を閉鎖してでも”EV市場開拓”を考えてもこちらを自社工場にすべきであった。
ローズビル工場生産能力は、200mmウェハライン(月産5700枚)。
TELEFUNKENにウェハ生産委託を行うという契約を締結する予定らしいが、将来ウェハ価格を
TELEFUNKEN社にコントロールされることなるだろう。
外資系企業は、適切なプロフィット・マージンを確保するので、日本的な営業戦術のルネサスエレクトロニクスは、商流手法は通用しなくなる事が予測される。
一時的、経理的にはFABライト策は短期的には、数字上の効果を出す事は可能だが、未来戦略上ルネサスエレクトロニクスのポジショニングを考えると大きな経営判断ミスである筆者は考えている。
パワー半導体とアナログ半導体強化を真剣に考えているのであれば、約5300万ドル(約43億円)で手放すべきではなかった。

※重要関連情報:三菱電機 パワーデバイス事業説明会
http://www.mitsubishielectric.co.jp/news/2010/0715-1.pdf
※重要関連情報:富士電機ホールディングス株式会社
http://www.fujielectric.co.jp/about/ir/pdf/pre/100818_h_6.pdf
日本の半導体メーカーに過去何度も出してきた警鐘してきたが、同じ事を繰り返しているだけである。
無償のブログで、ここまで企業の方向性を示す人間もいないと思うが…。

【過去の連載コラムの検証】
ルネサスエレクトロニクスの関係者には、筆者が過去、日本半導体メーカーに警鐘の為に連載していたコラムを再度、真剣に読んで欲しい。
●半導体ウォッチ(1)ニッポン製造業を蝕む“グローバル戦略”の欠如 2007/8/3
http://monoist.atmarkit.co.jp/feledev/articles/siliconeswatch/01/siliconeswatch01a.html
●半導体ウォッチ(3)電子立国ニッポン再生のカギは“SiC技術”だ 2007/10/1
http://monoist.atmarkit.co.jp/feledev/articles/siliconeswatch/03/siliconeswatch03a.html
半導体ウォッチ(6)国内半導体業界に迫る衝撃の再編シナリオ 2007/12/17
http://monoist.atmarkit.co.jp/feledev/articles/siliconeswatch/06/siliconeswatch06a.html
●半導体ウォッチ(11)混沌とする2008年世界半導体市場その先行きは?2008/5/27
http://monoist.atmarkit.co.jp/feledev/articles/siliconeswatch/11/siliconeswatch11c.html
●半導体ウォッチ(16)世界金融危機から始まる「ニッポン産業乱世」(前編)2009/1/9
http://monoist.atmarkit.co.jp/feledev/articles/siliconeswatch/16/siliconeswatch16a.html

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