シリーズ5:崩壊する日本ハイテク産業のエピローグ⑧『リチウムイオン電池の王座陥落』

ニッポン・リチウムイオン電池帝国が陥落の日危機迫るニッポン・デジタルカメラ産業
過去、絶対に韓国企業が追従出来ないと言われてきた日本の最先端技術分野(半導体・液晶・機能素材・製造装置・自動車・携帯など)は、全て日本からビジネスを奪われ、グローバルで韓国企業がシェアを伸ばしている。
筆者の3年前の警鐘が、ついに現実となった日である
姉妹サイトのコラボレーション・スペース内でも予言していた事である。
『テーマ:本業を放棄したサムスンSDI、新成長分野は2次電池』
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http://jsgi.jp/

政治家・経済産業省幹部やハイテク材料産業界の役員の方々は、「豊崎さん、リチウムイオン電池・材料分野はそんなに簡単にキャッチアップされることはない」、その3年前の答えがこれである。
原材料は、日本から調達し、開発(特許を保有する)技術も日本からヘッドハントし、最終消費アプリケーション(携帯やスマートフォンは内製機器向けグローバルシェア高、PCは日本企業に価格競争に競り勝ち、次世代電気自動車は、戦略的にドイツと米国自動車メーカーと組んでいる)を作り出せる韓国企業の強みである。
サムスンSDIは、つい数年前ディスプレィを主な事業にしていた企業であり、利益・市場成長のないと経営判断をし、リチウムイオン電池事業に対して「選択と集中」を行った。
この戦略転換の時期は、2009年4月であると筆者は、分析している。
そこから約2年かからず、日本リチウムイオン電池企業を抜き去ったのである。
ハイテク分野において、韓国と日本の違いは2つある。
1.国家レベルでのハイテク産業支援(優先的な工場用地や水の供給、税制優遇う)、この背後に.ハイテク専門家による戦略構築である。
2.最大の違いは、明確なるターゲット(目標設定)と戦略、そしてゴールである。

今回は特に、読者の皆さんに下記アドレスのの記事を良く読み、真剣に考えて頂きたい。


※関連記事:リチウムイオン電池も日本勢陥落 トップはまた韓国サムスン(シェアデータ有り)
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/101219/biz1012192330008-n1.htm

日本に残されたハイテク産業分野は、『自動車とデジタルカメラ』のみ。
しかし、自動車も米国やロシア含め新興国で、韓国勢(現代、起亜など)が急成長し、シェア拡大している。
リチウムイオン電池は、サムスンSDIとLG化学で世界シェアは、35.1%(インフォーメーションテクノロジー総合研究所調べ)、リチウムイオン電池のシェアを取ることで、何が起こるのか?
それは、今後スマートフォンやポータブル機器で普及拡大するワイヤレス給電の電池パック内蔵アプリケーションに対応する規格を『次世代版は韓国が作り上げる』ということである。
日本ハイテク産業は、戦略と経営スピードがないため、短期間で韓国企業に技術をキャッチアップされ、ビジネスを全て奪われている。

【サムスンSDIの経営戦略変更の背景】
サムスンSDIは元の企業名は、サムスン電管。
サムスンSDI名称は、1999年に変更されている。
SDIとは”Samsung Display Interface”の略語であり、コンピューターやモニターに利用されるディスプレーを製造する事業を本業、あるいは主力事業とするという意味であった。
同社ではこのSDIを”Storage Development Inc.に解釈した。
主力事業をディスプレーから2次電池、つまりエネルギー貯蔵(Storage)分野へと方向転換したのである。
サムスンSDIの経営転換はプラズマディスプレー(PDP)やブラウン管事業での多額の赤字を出し、事業の切り捨てと新産業創出型の成長分野に集中投資をしたという単純明快な論理である。
(逆に日本は、赤字事業でも事業切り捨ての判断が遅く、経営の危機意識とスピードがまったく無い、変化することを恐れ、身の保身を図っているだけである。これでは、企業の存+命を掛けてくる韓国企業に戦わずして勝てる訳がない。)
サムスンSDIの新戦略は、G(グリーン=クリーンエネルギー)、R(リサイクル=2次電池)、S(ストレージ=エネルギー貯蔵)の3分野を淡々と推進しているのである。
そして、サムスン電子の次なる日本へのターゲットは、『デジタルカメラ』である。
MD、DVDと同様にメカレスになった瞬間=デジタルカメラではミラーレス(高精細動画と従来静止画機能)に、日本に危機が訪れ、サムスン電子にはチャンスが訪れる。
日本の強みは、メカと光学であり、これが完全デジタル(半導体)になると日本は敗北への道と導かれる。
日本のデジタルカメラ業界は、上記の表を見て頂き、リチウムイオン電池の砦も陥落した今、本丸攻めに備えなければならい。
筆者からは、攻撃こそ、最大の防御なりという言葉を送りたい。
従来の固定概念に拘る企業は滅び去り、破壊的創造を試みる企業がグローバルのデジタルネティブ世代に受け入れられ生き残ることになる。
革新的な技術を取り入れ、新たなITサービスもビジネスモデルを構築しなければならない。

下記の特集は、東洋経済の記事でああり、現状のデジタルカメラ業界を良くまとめている。
※関連記事:日本はデジタル家電で残された最後の砦「デジカメ」を守れるか《特集・カメラ新世紀》http://www.toyokeizai.net/business/industrial/detail/AC/5a9042bbc8d175ddda2187534ad996a8/

【サムスン電子のデジタルカメラ戦略検証】
「ハイブリッド・デジタル・カメラ」という新領域を集中攻略するのがサムスン電子の戦略である。
未来のニッポン・デジタルカメラ業界には目に見えない(既に見えている)危機が迫っている。
ニッポン・デジタルカメラ業界は、対サムスンへの世界戦略を明確にし、内部での対策検討を十分にしておくべきだろう。

2010年3月28日時点(組織変更前)の朝鮮日報記事である。
サムスン・デジタル・イメージングの朴商鎮(パク・サンジン)代表理事(57)は、今年の事業展望に自信を見せた。
■昨年、史上最悪の金融危機の中でも良好な実績
(売り上げ1兆3524億ウォン〈現在のレートで約1083億円、以下同〉、純利益534億ウォン=約43億円)を挙げたのに続き、 今年初めに発売したハイブリッドデジカメも、序盤から注文をこなしきれないほど人気を集めているからだ。 ハイブリッドデジカメは、簡単に言えば、 コンパクト・デジタル・カメラの便利さとデジタル一眼レフ(DSLR)カメラの優れた画質を結合したもの。 サムスンのハイブリッドデジカメ(NX10)は、厚さ3.9センチ、重さ353グラム(レンズ除く)で、 サイズはDSLRカメラの半分にすぎないものの、DSLRカメラと同じ水準の画質を実現した。もちろん、レンズ交換も可能だ。
これまでサムスンは、 日本のキヤノンやニコンが市場を占有している高画質DSLRカメラの分野で弱い、という指摘を受けてきたが、 ハイブリッドデジカメの発売でこうした弱点を一挙に克服しようという戦略だ。 朴代表は「今後、ハイブリッドデジカメ市場はDSLR市場よりはるかに大きくなる」と自信を示した。 続けて朴代表は、「競合他社の製品を踏襲するだけでは、先頭に立つことはできない。 新たなやり方での革新により、市場を創出していかなければならない」と語った。

下記は、サムスンのデジタルミラーレス評価報告書の記事である。
※関連記事:ミラーレスAPS-C機「サムスンNX10」を購入してみた
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/special/20100218_349586.html
※関連記事:ミラーレス機「NX100」に注力するサムスン
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/20101005_398101.html

【過去の連載コラムからの検証】
連載:半導体ウォッチ(2)デジタルビデオカメラ市場に見るパンドラの箱 2007/9/4
http://monoist.atmarkit.co.jp/feledev/articles/siliconeswatch/02/siliconeswatch02a.html
国内デジタル家電メーカーが築き上げてきたデジタルビデオカメラ市場で、ニッポン製造業の根底を揺るがす危機的な状況が進行しつつある

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