シリーズ5:崩壊する日本ハイテク産業のエピローグ:番外編➃『ハイテク韓国版』

▮ハイテク韓国の大巨人、サムスン電子の迫り来るビジネスリスクの未来シナリオへ
日本の平家物語と「栄枯盛衰・・・」の同じようなことが、未来のハイテク王国の韓国でも起こりえる。
2010年サムスン電子(半導体事業)にとっては、最高の年であったはずである。
しかし、下記記事タイトルのように、サムスン電子がインテル社に迫ることは難しい環境が整ってきたと考えている。
※関連記事:サムスンがインテルに迫る、2010年の半導体ランキング
http://eetimes.jp/news/4456
表面的にか見えていないマスコミは好調サムスン電子であろう。
しかし、現実はサムスン電子の新経営陣は、難題が山積している。
このブログは、日本企業にとっては再起の可能性を探ることを考えて頂き、サムスン電子は韓国国家を支えるグローバル企業であり、サムスン電子は「南北朝鮮統一」の世界平和と日本の安全保障上の視点でも持続的成長しなければならないので、筆者から敬意払いながら警鐘したい。
現実的には、サムスン電子は”android陣営”ビジネスで成長を続けていく。
そのことをシナリオとして、読者の皆さんに公開しましょう。
インテル社と東芝セミコンダクター社こそが、今以上に企業としては持続的成長するというの筆者の評価分析でもあり持論である。(この2社は、本テーマ内では取り上げないことにする)


【サムスングループの未来リスク検証とシナリオ】
・サムスン電子の軍師去る:サムスン電子の崔匡海(チェ・グァンへ)副社長(同グループ財務部長)辞表を提出。
要因:同グループは「グループ組織」を復活させるに当たり、かつての戦略企画室に対し責任範囲っを強化、李鶴洙氏、金仁宙両氏を経営の一線から退かせたが、崔副社長の辞任もこれと同じ目的によるもの⇒完全同族経営へ権力移譲(三代世襲体制化での役員人事)、不透明な企業ガバナンスとなる。そして、旧経営陣の”ビジネス人脈”が全て無くなる。
・サムスングループの新総帥:サムスン電子会長李健熙(イ・ゴンヒ68歳)氏の長男である李在鎔(イ・ジェヨン42歳)が社長に昇格。
・南北朝鮮半島の類似する国家レベル的世襲体制:サムスングループは、サムスン電子会長李健煕(イ・ゴンヒ)氏の次女の李叙顕(イ・ソヒョン)第一毛織・第一企画専務(37歳)を副社長に昇進、副社長30人、専務142人、常務318人の計490人を昇進させる過去最大規模の役員昇進人事を発表。朝鮮日報によれば、昨年の役員昇進規模は380人だった。サムスン電子では、30代の役員が3人誕生するなど若手役員が大幅に増えた。今回の昇進人事では、昇進が平均より1年以上早い人は79人、2年以上早い人が12人含まれるなど、年功序列と関係ない人材抜擢を行う。
⇒日本経済(企業)が米国系シンクタンクに誘導され、米国型経営・人事評価体制に移行し、旧型年功序列日本モデルが完全に崩壊し、推進力を失った。サムスングループも日本モデルに入ることになる。
・新成長エンジンの発掘への陶酔:サムスングループは、グループ全体を束ねる組織として『未来戦略室』を新設。李在鎔氏はこの組織を使いながら、未来事業の発掘や育成し、医療・ヘルスケアとエネルギー分野に注力する。
⇒未来戦略室視点も持つ企業は、サムスン電子より先に、日本の東芝がバーチャル組織で確立しており、この視点は極めて重要である。この組織に必要なことは、戦略マーケッターである。
・欧州連合(EU)での価格談合:サムスン電子の申告のため、奇米電子など台湾企業4社とLGディスプレーのLCD計5社が価格談合で欧州連合(EU)に過去最高額の罰金を科された自由時報が報じた。東森新聞など有力日刊紙は、サムスン電子が「密告」したと報じ、このため楊淑君事件以降潜伏していた反韓感情がまた浮上していると伝えた。
⇒強固であった韓国ハイテク連合間に亀裂と企業摩擦が発生する。
・半導体最大顧客アップル社の逆鱗:サムスンUK社は、同社Twitterアカウント(@samsungukmobile)において、アップル社iPhone 4に対する不満をツイートしたユーザーに 「Samsung Galaxy S」を無償で提供すると申し出ている。サムスンUK社は、一部のユーザーに接触し、Samsung Galaxy Sを無償で代替品として提供することにしたと発表した。
・スマートフォンとタブレットPC分野における競合関係:アップル社とサムスン電子(モバイル機器)
は、アップル社のシステムとビジネスをサムスン電子が模倣することで、アップル社が開拓した新市場で、競合となった。⇒今後、スマートTV時代の到来で、アップルTVとサムスン電子のスマートTVで、競合関係となる。
アップル社からの報復として、激しい特許攻撃も十分予測される。
※サムスン電子半導体最重要顧客であったアップル社iPhone 4やiPadをベンチマークし、サムスン電子のモバイル事業部からアップル社の改良した製品がギャラクシーS、タブレットとして世界市場に発売された。

※関連記事:iPhoneとAndroid、スマートフォン市場でシェア拡大(パイチャートデータ有り)
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1006/07/news009.html
※関連記事:2012年までにiPadのシェアがネットブックを抜くとの予想
http://www.computerworld.jp/topics/iphone/187769.html

⇒部品供給顧客への裏切り行為、アップル社にとってはノウハウや生産計画、次期製品情報(システム・部品構成など)の流出に繋がり、継続したサムスン電子との関わりはビジネスリスクを抱えることになる。敵に塩を送る形(関係)を断ち切る必要がある。
※サムスン電子は、ビジネス(モラル)の原理原則から逸脱している。
(儒教の国の韓国でありながら、孟子の教え=礼節を重んじるからはかけ離れた現実である)
⇒AGD見解としては、サムスン電子は、インテル社に迫ることは100%不可能である。

・サムスン電子の半導体最高専門家と言わた現職副社長自殺:サムスン電子の頭脳を喪失。
・サムスン電子の半導体ワーカーが白血病で多数死亡⇒米国企業顧客離れの一因となる。
※アップル社EMS富士康国際(フォックスコン)社自殺問題と類似。
・東芝モバイルディスプレイの石川工場1000億円の設備投資の報道:現在の東芝のビジネス戦略上、確約されたもの以外、特にディスプレィ領域は、スマートフォンメーカーの大型受注(確約)がない限り、1000億円の投資はしない。サムスン電子のAMOLEDに対抗出来る低消費電力・超高精細・高性能なディスプレイを日本企業の東芝モバイルディスプレイに要請したことが推測される。
※東芝側は報道を否定。
・ギャラクシーSの成果:サムスン電子イ・ミンヒョク首席(38歳)は、ギャラクシーSをはじめ、スマートフォンのデザインで優れた成果を挙げた点が認められ、昇進年限を4年前倒しする大抜擢された。
・Qualcomm社の増産体制:Taiwan Semiconductor Manufacturing(TSMC)社がQualcomm社向けLSIの生産能力を、2010年の110万枚から2011年に180万枚に引き上げる見通しとDigiTimesが報道した。
この増産分70万枚のうち、30万~40万枚は「iPhone5/iPad2」向けベースバンドLSIなどアップル社向けにあてる見込み、このQualcomm社からの受注は、2011年に200億台湾ドル(約548億円)程度の売上規模と推測されている。
・android端末のプラットフォームの未来:米調査会社PRTM社の分析では、スマートフォン・メーカー12社から出ている57機種のAndroid携帯端末を対象に調査を実施、その結果全体の7割を超えるモデルにQualcomm社のチップセットが使われていることが判明。
この「Quadroid」(Qualcomm + Android)と呼ぶ組み合わせ本命プラットフォームとなる。
※調査会社Trefis社によれば、Qualcomm社のCDMAチップのシェアは現在の66%から2016年には75%まで上昇する可能性がある。
⇒アップル社はiPhone 5/iPad2以降はQualcomm社の新型チップセット(デュアルコア)に全面切り替えを行うものとAGDでは分析している。
・サムスン電子製造A4チップ切り替え:Qualcomm社の新型チップは、ベースバンド内臓でサムスン電子がASICとしてファンダリ製造するアップル社A4チップはベースバンドが外付けで部品コスト、トータル消費電力、シングルコアで性能向上はモバイルでは限界である。
・サムスン電子は、アップル社スマートフォン、タブレットPCと自社のスマートフォン、タブレットPCの”半導体部品のダブルインカム戦略”が2011年以降取れなくなり、半導体ビジネス規模は、抑制される可能性が極めて高い。⇒アップル社からのビジネス模倣し、競合企業となった制裁である。
・アップル社の新サプライチェーン構築戦略(AGD独自推測):Qualcomm社(デュアルコアCPU、ベースバンド)、コンボ型ならBroadcom社(近傍通信:WiFi,BT)東芝セミコンダクター(NAND)、マイクロン・エルピーダ(DRAM)社、東芝ディスプレィorシャープ(表示部)、NXPセミコンダクター(NFCチップ)、TSMC社/ASE社(半導体製造/組立)らの企業を主軸に置き、サムスン電子とは、今後距離を取るだろう。

※AGDの最新分析では、ベースバンドはQualcomm社、アプリケーションプロセッサA5(製造先不明だが恐らくiPhone5のA5はサムスン電子製造担当である、A4と同じならサムスン電子)、近傍通信は、Skyworks Solutions社であろう。アプリプロセッサは、CDMA方式などまだ地域ローカル対応が必要なため、Qualcomm社独占ソリューションにはアップル社側がしなかったと考えている。

⇒これ以外にCPUとメモリを実装するPoP(パッケージ・オン・パッケージ)のビジネスもある。
 
・iPhone4の設計ミス(人体がダイポールアンテナとなり、アンテナ長=RFが可変し、受信障害問題発生)⇒アップル社はリコールせず、iPhone5にを前倒しし、早期に切り替えを実施するものと推測。これと連動し、主力半導体ベンダーの切り替えを行う。
・韓国サムスン電子の米半導体工場(米テキサス州オースティン)の生産能力増強に36億ドル投資
⇒この工場は、ほぼアップル社専用工場とも言えよう。アップル社の未来に消滅するであろうビジネスリスクは、サムスン電子にとって不良資産となる可能性があるだろう。
(ギャラクシー向け自社専用工場)
・韓国ハイテク企業やサムスン電子の主力部隊(最先端半導体・電子機器製造)の拠点は韓国:韓国は戦時国家である。⇒一極集中する生産設備と拠点は、北朝鮮暴発(最悪のシナリオとしての有事)から全面戦争になった場合、このサプラィチェーンに依存する企業は、大きな影響を受ける。
※グローバル企業は、自社の持続的成長戦略を考えるならば、部品供給(ベンダー含む)の日本企業、台湾企業などへ分散調達、または調達比率が高まってくる。
・韓国国内の社会格差問題:大財閥企業サムスン電子から下の中小企業との優遇格差、国民との富の格差が、北朝鮮の暴発Xディーと”不平・不満”が連動し、社会混乱するリスクがある。

【重要参考記事】
※関連記事:サムスンがインテルに迫る、2010年の半導体ランキング
http://eetimes.jp/news/4456
※関連記事:韓国サムスン電子、米半導体工場の生産能力増強に36億ドル投資へ
http://jp.reuters.com/article/domesticEquities4/idJPnJS871289520100610
※関連記事:サムスン電子の副社長が投身自殺、韓国に大きな衝撃
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=0127&f=national_0127_020.shtml
※関連記事:韓国「サムスン電子の労働者が白血病で死亡」
http://nippon-end.jugem.jp/?eid=649
※関連記事:【IEDM 2010】クアルコムが半導体製造の課題を指摘
http://eetimes.jp/news/4460
※関連記事:ECC機能を搭載した25nmプロセスのNANDフラッシュ
http://ednjapan.cancom-j.com/news/2010/12/7647
※関連記事:東芝子会社が能美市を軸に新工場の建設を検討 (15日)
http://www.hab.co.jp/headline/news0000006475.html
※関連記事:シャープ、アップル向け新ライン 液晶1000億円投資 亀山工場、12年後半から量産
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819696E3E4E297E18DE3E4E3E0E0E2E3E29C9CEAE2E2E2
※関連記事:シャープ、三重にライン新設検討 亀山工場、携帯向け液晶
http://www.47news.jp/CN/201012/CN2010121701000172.html
※関連記事:シャープ:宿敵アップル「得意先」に 迫られたつらい判断
http://mainichi.jp/select/biz/news/20101218mog00m020026000c.html
※関連記事:iPhone 4受信障害の原因は「RF信号の干渉」ってなに?
http://apple-products-fan.seesaa.net/article/154780401.html
※関連記事:iPadの「A4」プロセッサを分解する
http://www.computerworld.jp/topics/mp/178630.htmla
※関連記事:グーグルとNXP、AndroidにNFCを統合へ
http://eetimes.jp/news/4467
※関連記事:「韓米両国軍は局地戦と全面戦の双方に備えている」
http://www.chosunonline.com/news/20101216000042
※関連記事:「精神分裂状態の北朝鮮、全く違う形のテロ攻撃も」(1)(2)
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=135805&servcode=500&sectcode=500
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=135806&servcode=500&sectcode=500

【最新情報による検証】
朝鮮日報引用:サムスン電子は27日、来年2月のスペインのバルセロナで開かれる世界最大の携帯デバイス見本市「モバイル・ワールド・コンファレンス(MWC)2011」でスマートフォン(多機能携帯電話端末)の人気機種「ギャラクシーS」の後継機種となる「ギャラクシーS2」(仮称)を発表することを明らかにした。

ギャラクシーS2は、基本ソフト(OS)にグーグルのアンドロイド2.3を採用し、デュアルコアプロセッサーを搭載しており、アプリケーションを起動するのにかかる時間がこれまでの半分に短縮される。また、電子決済機能、方向感知センサーなどが基本仕様として備わっている。

【筆者の2005年時点でのコラム内分析の再検証】
このブログでもお蔵入りコラムを2010年5月31日月曜日にシリーズ2:日本半導体産業復活のソリューションと警鐘 ➄ として公開した。
今回のサムスン電子の企業評価と関連性が高いので、再度レビューしよう。
産業タイムズ社半導体産業新聞が韓国サムスン電子の経営上層部の圧力によって、出版前にお蔵入りさせられた2005年の連載コラム第30回「新世紀IT 革命の舞台裏~アナリストはズバリ直言する!!」のオリジナル原稿である。
日本国憲法第12条でも保障されている「表現の自由」を一番主張するマスコミ自体が他国企業の外圧に屈したたということである。
第28回:結論は、装置・加工材料(機能材料)・部品の制限戦略
第29回:結論は、カリスマ経営者李健煕(イ・ゴンヒ)氏交代のタイミング
をクリッピングしておこう。

※このコラムが2005年時点であること、2010年とは違いこの時代にサムスン電子企業に対して弱点を公言するアナリスト、マスコミは1人も1社もいなかったのである。

~お蔵入りのコラム~
日本企業が唯一、サムスン電子に対抗出来た戦略(今となれば時すでに遅しである。)
幻の第30回のコラムが『朝鮮半島の平和的統一とウォン高こそ国家戦略なり』
サムスン電子撃破と題して、過去2回は、日本半導体企業に向けた提言を行ってきたが、企業だけによる推進では解決し難い、日本政府主導のもと、日本国全体で取り組むべき課題がある。
最後に、打倒サムスン電子に向けた日本政府の役割についても、述べることにする。
1997年年に発生したアジア通貨危機から始まる、米国政府主導のIMF の通貨対策、いわゆる金利、為替の実運用によって、日本にとって不利益な状況が続いている。
日本国政府の役目として、まずは、国際的な討論の場で、これを是正すべきである。
また、日本国として日本エレクトロニクス産業と国益を守るため、事業体系とセグメント毎に一つのベクトルを向いた、真のオールジャパン企業連合(旧財閥系企業の再統合)を再構成し、力を終結させなければならない。
これも政府・企業一丸となった、ハイテク日本国としての使命である。
企業間としては、インテルとエルピーダ、また米国政府や米国工業会( SIA など) との関係強化を図り、ファーストティアの世界トップPC メーカーのプロキャメントを、日本陣営のビジネスに取り込むことで、日本のPC ・デジタル家電・携帯電話企業も、サムスン電子に対して、国益を守る戦略的な方法でプロキャメントを行う必要がある。
また、日本の半導体企業は、サムスン電子のように徹底した人材管理、情報統制を敷き、自ら集めた情報を分析し、競合企業のシェアを確実に奪える戦略と組織作りを行う必要もある。
さらに、サムスン電子が、収益性を高めるために、前工程、後工程で、どのメーカーの製造装置を採用し、どの外部委託企業( デザインハウス、パッケージ、テスト、メッキなど) とパートナーを組み、どのようなメカニズムのサプライチェーン構造になっているのか、ベンチマークすべきである。
ここから必ず、「打開策」が見つかるはずだ。
ただ、戦略を実行する上で、一つ、忠告しておかなければならない。
サムスン電子は、今世界でも優れた韓国企業の1つであり、その背景には軍隊と同じ組織力(忠誠)と儒教がある。
日本人は、原点に返り、孫子の兵法を再度学ぶ必要がある。
彼らの怖さは、謙虚の仮面の下に隠れた強かさであり、これが最大の武器であると言える。

【↑の”ウォン高”誘導戦略の効果検証】
2010年12月17日の台湾DigiTimesに記事にこの効果を示した結果が出ている。
台湾のDRAMモジュールメーカー、台湾ドル高で大幅損失
Adata Technology、Transcend Informationなど台湾のDRAMモジュールメーカー各社が台湾ドル高による為替差損の影響で、5000万~6000万台湾ドル(約1億4000万~1億6700万円)の損失を被った模様。台湾中央銀行の1ドル30台湾ドル(約84円)台を維持する為替介入策が影響したという。

※日本国は、強力な軍事力と資源を持てない国である以上、もっと野心的な裏の国際外交をしたたかに賢く行うことを筆者から再提言しておきたい。

このブログの人気の投稿

緊急分析:国連宛に送られたとされる『ロックフェラーの書簡』を検証する

緊急分析:SiCウェハの大口径化で市場拡大を目指す日本半導体メーカー

シリーズ5:崩壊する日本ハイテク産業のエピローグ➃